今月の一冊アーカイブ
画像をクリックすると本の詳細が表示されます。
わすれんぼうのねこモグ
ジュディス・カー/作 斎藤 倫子/訳 あすなろ書房
ISBN:978-4-7515-2505-0
トーマス家のねこ、モグは大事な家族の一員ですが、うっかりやでわすれんぼうです。花壇の花を台無しにする、いきなり大声で鳴く、お母さんの帽子をぺしゃんこにするなど問題ばかり起こしています。子どもたちはかばってくれますが、お父さんとお母さんからは怒られてばかりいます。夜、モグは悲しくなって庭に飛び出しますが、ふと台所の窓を見たところ…。
でぶねこモグの面白い表情や可愛らしさに思わずほおがほころびます。うっかりやのモグが意外なところで一家の役に立ったことで、最後はあたたかく幸せな気持ちになります。
イギリスで、1970年の初版以来読みつがれてきたロングセラー絵本です。
ぼくのたび
みやこし あきこ/作
東京 ブロンズ新社 2018.11 ISBN:4-89309-647-0
主人公の「ぼく」は、小さな町に小さなホテルを開いています。旅をしている人をもてなすのが「ぼく」の毎日の仕事です。けれど、「ぼく」の心には、自分自身が旅をしたい、という思いがあふれているのです。この絵本は、そんな「ぼく」が、自分の心情を読者に静かに打ち明けるような文章で綴られています。
「ぼく」の日常は白黒で描かれ、旅をしている「ぼく」を想像している場面では豊かな色彩が使われていることで、「ぼく」が旅を心に描いた時の解放感やときめきが伝わってきました。
読み進めると、詩情を感じるような絵をじっくりと眺める楽しみが味わえます。いつしか読んでいる自分にも、遠い所へいってみたい、という気持ちがわいてくる作品でした。
きりのなかのはりねずみ
ノルシュテイン/作,コズロフ/作,ヤールブソワ/絵,こじま ひろこ/訳
東京 福音館書店 2000.10
ISBN:4-8340-1705-2 MARCNo.:00046321
はりねずみは、友達のこぐまとお茶を飲みながら星を数えるために、日が沈んだ後に出かけました。野道を歩いて出くわした白馬を追って、霧の中に入ってしまったはりねずみは、道を失い、さまようことに。その上、大事に提げていたお土産の包みもなくし探していると、どこからか、こぐまの呼びかける声が聞こえてくるのでした。
白馬やふくろうなど出会う生き物たちはとても大きく描かれています。小さなはりねずみから見た世界を表現しているのかもしれません。化け物の幻におびえたり、川に落ちたりするはりねずみの姿にはらはらしながらも、ようやくこぐまの家にたどり着いて二人で並んでくつろいでいる後ろ姿にほっとさせられます。
まあちゃんのながいかみ
たかどの ほうこ/さく 福音館書店 2008.4
ISBN:4-8340-1330-6 MARCNo.:08142019
長い髪が自慢の友達のはあちゃんとみいちゃん。まあちゃんの髪は短いおかっぱです。背中が全部隠れるくらい伸ばすのと嬉しそうな2人に、まあちゃんは「あたしなんか、もっとずっと伸ばすんだから」と言います。さて、まあちゃんがもっとずっと髪を伸ばしたらどうなるでしょう?橋の上から垂らして釣りをしたり、ロープのようにして牛を捕まえることだってできます。長い髪はとても便利で、色々なことができて、お手入れだって簡単。まあちゃんの長い髪の話を聞きながら、3人はうっとりします。
現実の3人の場面は白黒、想像の世界はカラーで描き分けられています。ページをめくるたびに、まあちゃんの想像力と発想力に驚く楽しい絵本です。
ながいながいよる
マリオン・デーン・バウアー/文 テッド・ルウィン/絵 千葉 茂樹/訳 岩波書店 2011.1 ISBN:4-00-111221-4 MARCNo.:11002723
雪が降り積もった、静かな夜の森。いつもより夜が長いと感じた動物たちは、いなくなってしまった太陽を呼び戻そうと躍起になります。カラスやヘラジカ、キツネが思い思いの方法で試みようとしますが、風に「あなたじゃない」と、とめられてしまいます。それでは、小鳥ならどうでしょうか。
見開きいっぱいに描かれた動物たちの姿は迫力があります。夜の場面は、3色の絵の具だけで描かれているそうです。静謐な夜と朝の光が美しい絵本です。
ボタ山であそんだころ
石川えりこ/さく・え 福音館書店 2014.3
ISBN:4-8340-8075-9
福岡県にはかつて炭坑で栄えた町がたくさんありました。この物語は作者が生まれ育った炭坑の町が舞台です。石炭を生業とした人々の日々の暮らしやその中でたくましく育つ子どもたちの日常が、モノクロの筆致で丁寧に生き生きと描かれています。豆炭づくり、カンラク池、ボタ山登りにどろの川わたり、そして炭坑事故…。当時を生きた人々に思いをはせながら、絵本をひらいてみませんか?
ドングリさがして
ドン・フリーマン/作 ロイ・フリーマン/作 やました はるお/訳 BL出版
ISBN:4-7764-0515-3
冬間近のある朝、ワシントン市のラファイエット公園に住むリスのアールは、夏に隠していたドングリを探しに出かけました。お腹をすかせた子どもたちのために、もっとドングリを探そうと、車の往来の多い大通りや人混みを駆け抜けながら進みました。やっとお目当てのドングリを見つけ、帰ろうとした時、大通りはパレードの人々とお祭りの車でぎっしり詰まっていて、横断することができませんでした。そこで、アールは…。
家族のために奮闘するお父さんリスのアールの姿が可愛らしく描かれているため、思わずいとおしくなります。公園の木々、大通りの並木、落ち葉の中の紅葉が鮮やかで、秋におすすめの一冊です。
ちいさなふたりのいえさがし
たかお ゆうこ/さく 福音館書店 ISBN:4-8340-8702-4
あるところに、大きな大きなくるみの木があり、その木の下の小さなくるみの中に、小さなおじいさんとおばあさんがすんでいました。ところが、ふたりが水をくみに出かけている間に、くるみの家がこなごなにこわれていました。そこでふたりは家探しの旅に出ます。たどり着いたところはいちごばたけ。ふたりはいちごの中身をくりぬいて家をつくりましたが、暑くなるといちごの家はぐにゃりとへしゃげてしまいました。ふたりは再び家探しの旅に出ます。果たして、ふたりは安心して住める家を見つけることができたでしょうか?
ふたりは家探しに困りながらも、家づくりでくりぬいた果物の中身でジャムやゼリーなどをつくったり、家につくった窓から夕日を眺めたりして楽しみます。夢のある楽しい絵本です。
あのくもなあに?
富安 陽子/作 山村 浩二/絵
ISBN:4-8340-8391-0 マーク番号: 18021948
空にはいろいろな形の雲が浮かんでいます。本書はその色や形から膨らむ空想の世界を描いています。
繰り返される「あのくもなあに? なんだろね。」という詩のようなリズミカルな文章と本物のように描写された迫力のある雲。カミナリ様や竜の親子も登場します。
読後、思わず空を見上げてしまいたくなりますよ。
あけるな
谷川俊太郎/作 安野光雅/絵 ブッキング
ISBN:4-8354-4267-9 タイトルコード:1000610064745
表紙には、古いレンガ造りの建物の扉に大きく「あけるな」という表示。思わず、開けて中をのぞきたくなりませんか?
この絵本は、「あけるな」という注意を聞かず、次々に扉を開けていくお話です。開けてはいけない扉を開けると、そこにどんな世界が広がっているのか。想像しながらページをめくってみて下さい。静かでとらえどころのない不思議な世界が、安野光雅さんの繊細で優しい色使いで描かれています。
もりのおばけ
かたやま けん/さく・え 福音館書店
ISBN:4-8340-2651-1 タイトルコード:1000000757156
弟とかけっこをして、いつの間にか深い森の中へ入ってしまったお兄ちゃん。暗くて深い森の中は、なんだかへんなものがいっぱいです。不安になって「おーい」と弟を呼ぶと、「おーい」と答える声。でも、その声は人間の声ではなくて…。
木の質感や動物たちの柔らかな毛並みなどが、鉛筆画独特のタッチで繊細に描かれています。モノクロの幻想的な世界が、どこか不気味な気配を醸し出しています。
わたしのかさはそらのいろ
あまん きみこ/さく 垂石 眞子/え 福音館書店 2015.4
ISBN:4-8340-8165-7 タイトルコード 1000001334813
女の子は傘屋さんで、晴れた日の空の色だと気に入り青い傘を選びました。そして新しい傘をさして雨の中を野原へ出かけます。
野原では、子ネズミやら子ウサギやら、鳥や虫、そして女の子の友だちが「いーれて」と声をかけては、傘の中に入ってきました。ずんずん広がる傘の下で、歌い遊ぶ女の子たち。やがてみんなは雨上がりの空を一緒に見ることになります。
見上げる女の子の頭上に晴れやかに広がっていく、空のような傘の青さを描いた場面はとても印象的です。柔らかで温かく透明感もある絵が、女の子が傘と一緒に体験する楽しい夢のようなひと時を優しく包み込むように伝えてくれています。
エゾナキウサギ:鳴き声できずなを結ぶ』(命のつながり) 5
『エゾナキウサギ : 鳴き声できずなを結ぶ』(命のつながり) 5
佐藤 圭/写真・文 文一総合出版 2023.10
ISBN: 4-8299-9019-3 タイトルコード:1000002235330
エゾナキウサギは、何万年も昔から北海道に生息しています。丸くて短い耳、小さくてずんぐりした体をしています。大きな岩が積み重なった場所に住んでいて、岩の下の洞窟のような空間を巣にしています。すぐに親離れをして、常にひとりで行動をしますが、鳴き声で仲間とコミュニケーションをとります。
著者である写真家の佐藤さんは、13年にわたり、エゾナキウサギを観察してきたそうです。1年を通したエゾナキウサギの暮らしや生体がわかる、鮮やかで美しい写真絵本です。同著者のエゾシマリスの写真絵本もおすすめです。