今月の一冊アーカイブ
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ながいながいよる
マリオン・デーン・バウアー/文 テッド・ルウィン/絵 千葉 茂樹/訳 岩波書店 2011.1 ISBN:4-00-111221-4 MARCNo.:11002723
雪が降り積もった、静かな夜の森。いつもより夜が長いと感じた動物たちは、いなくなってしまった太陽を呼び戻そうと躍起になります。カラスやヘラジカ、キツネが思い思いの方法で試みようとしますが、風に「あなたじゃない」と、とめられてしまいます。それでは、小鳥ならどうでしょうか。
見開きいっぱいに描かれた動物たちの姿は迫力があります。夜の場面は、3色の絵の具だけで描かれているそうです。静謐な夜と朝の光が美しい絵本です。
ボタ山であそんだころ
石川えりこ/さく・え 福音館書店 2014.3
ISBN:4-8340-8075-9
福岡県にはかつて炭坑で栄えた町がたくさんありました。この物語は作者が生まれ育った炭坑の町が舞台です。石炭を生業とした人々の日々の暮らしやその中でたくましく育つ子どもたちの日常が、モノクロの筆致で丁寧に生き生きと描かれています。豆炭づくり、カンラク池、ボタ山登りにどろの川わたり、そして炭坑事故…。当時を生きた人々に思いをはせながら、絵本をひらいてみませんか?
ドングリさがして
ドン・フリーマン/作 ロイ・フリーマン/作 やました はるお/訳 BL出版
ISBN:4-7764-0515-3
冬間近のある朝、ワシントン市のラファイエット公園に住むリスのアールは、夏に隠していたドングリを探しに出かけました。お腹をすかせた子どもたちのために、もっとドングリを探そうと、車の往来の多い大通りや人混みを駆け抜けながら進みました。やっとお目当てのドングリを見つけ、帰ろうとした時、大通りはパレードの人々とお祭りの車でぎっしり詰まっていて、横断することができませんでした。そこで、アールは…。
家族のために奮闘するお父さんリスのアールの姿が可愛らしく描かれているため、思わずいとおしくなります。公園の木々、大通りの並木、落ち葉の中の紅葉が鮮やかで、秋におすすめの一冊です。
ちいさなふたりのいえさがし
たかお ゆうこ/さく 福音館書店 ISBN:4-8340-8702-4
あるところに、大きな大きなくるみの木があり、その木の下の小さなくるみの中に、小さなおじいさんとおばあさんがすんでいました。ところが、ふたりが水をくみに出かけている間に、くるみの家がこなごなにこわれていました。そこでふたりは家探しの旅に出ます。たどり着いたところはいちごばたけ。ふたりはいちごの中身をくりぬいて家をつくりましたが、暑くなるといちごの家はぐにゃりとへしゃげてしまいました。ふたりは再び家探しの旅に出ます。果たして、ふたりは安心して住める家を見つけることができたでしょうか?
ふたりは家探しに困りながらも、家づくりでくりぬいた果物の中身でジャムやゼリーなどをつくったり、家につくった窓から夕日を眺めたりして楽しみます。夢のある楽しい絵本です。
あのくもなあに?
富安 陽子/作 山村 浩二/絵
ISBN:4-8340-8391-0 マーク番号: 18021948
空にはいろいろな形の雲が浮かんでいます。本書はその色や形から膨らむ空想の世界を描いています。
繰り返される「あのくもなあに? なんだろね。」という詩のようなリズミカルな文章と本物のように描写された迫力のある雲。カミナリ様や竜の親子も登場します。
読後、思わず空を見上げてしまいたくなりますよ。
あけるな
谷川俊太郎/作 安野光雅/絵 ブッキング
ISBN:4-8354-4267-9 タイトルコード:1000610064745
表紙には、古いレンガ造りの建物の扉に大きく「あけるな」という表示。思わず、開けて中をのぞきたくなりませんか?
この絵本は、「あけるな」という注意を聞かず、次々に扉を開けていくお話です。開けてはいけない扉を開けると、そこにどんな世界が広がっているのか。想像しながらページをめくってみて下さい。静かでとらえどころのない不思議な世界が、安野光雅さんの繊細で優しい色使いで描かれています。
もりのおばけ
かたやま けん/さく・え 福音館書店
ISBN:4-8340-2651-1 タイトルコード:1000000757156
弟とかけっこをして、いつの間にか深い森の中へ入ってしまったお兄ちゃん。暗くて深い森の中は、なんだかへんなものがいっぱいです。不安になって「おーい」と弟を呼ぶと、「おーい」と答える声。でも、その声は人間の声ではなくて…。
木の質感や動物たちの柔らかな毛並みなどが、鉛筆画独特のタッチで繊細に描かれています。モノクロの幻想的な世界が、どこか不気味な気配を醸し出しています。
わたしのかさはそらのいろ
あまん きみこ/さく 垂石 眞子/え 福音館書店 2015.4
ISBN:4-8340-8165-7 タイトルコード 1000001334813
女の子は傘屋さんで、晴れた日の空の色だと気に入り青い傘を選びました。そして新しい傘をさして雨の中を野原へ出かけます。
野原では、子ネズミやら子ウサギやら、鳥や虫、そして女の子の友だちが「いーれて」と声をかけては、傘の中に入ってきました。ずんずん広がる傘の下で、歌い遊ぶ女の子たち。やがてみんなは雨上がりの空を一緒に見ることになります。
見上げる女の子の頭上に晴れやかに広がっていく、空のような傘の青さを描いた場面はとても印象的です。柔らかで温かく透明感もある絵が、女の子が傘と一緒に体験する楽しい夢のようなひと時を優しく包み込むように伝えてくれています。
エゾナキウサギ:鳴き声できずなを結ぶ』(命のつながり) 5
『エゾナキウサギ : 鳴き声できずなを結ぶ』(命のつながり) 5
佐藤 圭/写真・文 文一総合出版 2023.10
ISBN: 4-8299-9019-3 タイトルコード:1000002235330
エゾナキウサギは、何万年も昔から北海道に生息しています。丸くて短い耳、小さくてずんぐりした体をしています。大きな岩が積み重なった場所に住んでいて、岩の下の洞窟のような空間を巣にしています。すぐに親離れをして、常にひとりで行動をしますが、鳴き声で仲間とコミュニケーションをとります。
著者である写真家の佐藤さんは、13年にわたり、エゾナキウサギを観察してきたそうです。1年を通したエゾナキウサギの暮らしや生体がわかる、鮮やかで美しい写真絵本です。同著者のエゾシマリスの写真絵本もおすすめです。
ひとりになったライオン
夏目 義一/文・絵 福音館書店
ISBN:4-8340-8331-6 マーク番号:17020002
サバンナで暮らす若いライオンが、家族と離れて、ひとりで生きていくことになりました。まだ、ひとりで狩りも上手にできません。お腹が空いて途方にくれていると、シマウマの子どもを見つけました。草むらに隠れて見ていると、子どもの家族や仲間がたくさん集まってきて、子どもを見失ってしまいます。ひとりになったライオンの狩りは、うまくいくでしょうか。
強いはずのライオンのちょっと情けなくてユーモラスな表情を見ると、ついつい応援したくなります。動物画家の夏目義一さんの、動物たちの写実的で躍動感のある描写に圧倒されます。サバンナの青い空も印象的です。
おいしいものつくろう
岸田衿子/さく 白根美代子/え 福音館書店 2014.4
ISBN: 4-8340-8058-2 タイトルコード:1000001204513
あらいぐまの家の朝ごはんは、「ぱっくりドッグ」、うさぎの家は、「オムレツ・フラメンコ」。お昼は、みんなでお弁当を山で食べます。晩ごはんも、みんなでごはんを持ち寄って食べることになりました。ごろんごろんと転がして作るじゃことごまの「おむすびごろりん」や、果物がたっぷりはいった「かじゅえんゼリー」はとっても美味しそう。あらいぐまやうさぎが、歌うようなテンポで料理をする様に、思わず顔がほころびます。
優しいタッチの絵と細かく書き込まれた動物達の台詞、美味しいごはんを見るだけでも楽しめますが、レシピ通りに美味しいごはんを作ったら、もっと楽しいかもしれません。
小さなサンと天の竜
チェン ジャンホン/作・絵 平岡 敦/訳 徳間書店 東京 2016.6
ISBN:4-19-864182-5 タイトルコード:1000001483520
高い山に囲まれ、災害のせいで痩せてしまった谷間の地に、サンは生まれました。両親は、毎日険しい山を越え畑仕事に行かねばならず、身も心も疲弊しきっていました。「この山さえなければ…」そんな両親の言葉を毎日聞いていたサンは、幼いながら山を動かす決意をします。そして、次の日から毎日、山に登り、ツルハシで岩を砕き、村はずれに運び続けるのです。はたしてサンは山を動かすことができるのでしょうか。
サンの強い意志を宿した瞳や、絵本から飛び出して来るかのように描かれた三頭の白竜が物語に迫力をあたえています。
りゅうのめのなみだ
浜田廣介/作 太田大八/絵 ひさかたチャイルド 2007.3
ISBN:4-89325-677-5 タイトルコード:1000000004500
口は耳まで裂け、火のような真っ赤なものをを吐き、雷のような唸り声を出す。うっかり近づくと丸飲みにされてしまう。深い山奥に住む竜のことを、いつの間にかそう決めつけ、忌み嫌うようになった村人たち。しかし、一人のおとなしい男の子だけは違っていました。そして、自分の誕生会に竜を招待しようと山奥に入って行くのです。竜と出会った男の子は、そして竜はどうなるのでしょうか。
絵本の中で、竜は流れるような描線と鮮やかな色彩で躍動感たっぷりに描かれています。また場面ごとに変わっていく竜の表情も魅力的です。